【すべてのジェンダーを受け入れる】SOMEWHERE@三軒茶屋
“1日10分じぶん時間をとって輝いて欲しい”
そのような願いで情報を発信しているの!
Lyset Jensen
「ここではない、どこか」を探して。ーーSOMEWHEREという場所が灯す、小さな希望ののれん
三軒茶屋の片隅にあるカフェ、SOMEWHERE(サムウェア)。
以前は「くだものはうめつ」「暇喫茶ユルク」という名で親しまれていたその場所の入り口には、今も昔も変わらず、一枚ののれんがかかっている。
それは「すべてのジェンダーを受け入れる」——そんな想いを託したのれんだ。

「居場所がない」のではなく、「居場所がある」と思えるように
この場所をつくったオーナー・うめつさんは、昔から「環境が人を変える」と信じてきた。
人生の転機を迎えるとき、多くの人は付き合う人を変えたり、住む場所を変えたり、仕事を変えたりする。
だからこそ、自分の場所が誰かの転機に寄り添えるような、そんな拠点でありたかったという。

「NOWHERE(どこにもない)」——カフェに併設する形で新たにうめつさんが立ち上げた不動産会社の名前には、“居場所がない”という切実な実感がこめられていた。
でも、それは同時に「NOW・HERE(今・ここ)」とも読める。
ただ認識を少し変えるだけで、孤独がぬくもりに変わる。そんな言葉遊びに、やさしい哲学が見え隠れする。
新しい名前とともに、新しい世界の入口を
「くだものはうめつ」として一度カフェを開いたとき、うめつさんはどこか自信を失っていたという。
家業は果物の産地として知られる山形で約60年に渡り果物屋を営んでいた。冬の寒さと地域性という比較的閉鎖的な文化の東北地方にあって、当時から店の店頭にはレインボーフラッグ(LGBTQ+の人々の尊厳と連帯を象徴する旗)をかかげており、子どもながらに前衛的でかっこ良い店だったと今振り返れば思う。

父はその頃からリベラル主義で、母はコンサバ、保守的な人間だったと思うが、自分の母校であった中学校のALTの男性教師がゲイである事を公表した事で、そんな人たちをサポートしたいと母の意識は変容していった。
くだもの屋という冠により高まる顧客の期待値。
見た目の“レトロ映え”はあっても、自分が本当に目指したい空間とは少し違っていた。
だから、あえて名前を変えた。「SOMEWHERE」。
“どこか”——その語感のなかに、明確な場所でありながら、誰にも規定されない余白がある。
「誰にも言えない、でもここなら言える」
そんな場所が、この世界には必要なのだ。
“美しさ”からも、“性別”からも、解放されるカフェでありたい
SOMEWHEREには、ルッキズムやジェンダーに違和感を抱える人たちがふらりとやってくる。
実際にLy:setが訪れた日も、カフェの両端に位置する広々としたテーブル席では、Instagram用の映え写真を撮ってはすぐに帰る子もいれば、友達数人と訪れ推しとのスイーツ写真を楽しそうに撮っている子たちが楽しむ一方で、うめつさんを囲むカウンターでは新進気鋭のタトゥーアーティストさんや、新宿2丁目に通い詰めている看護師さん、セクシー女優の常連さんなど様々な方が集っていた。
一見おしゃれでスタイリッシュなカフェ。でも、実はこの場所は、職場でも家庭でも自分を隠さなければならない人たちが、そっと本音をこぼせるサードプレイスとしてつくられている。

「彼女いるの?」「彼氏は?」
そんな何気ない会話が誰かを傷つけることもある社会で、全員がセクシュアリティをオープンにできる空間をつくるのは、簡単なことじゃない。
けれど、例えば編み物カフェのようにコンセプトがある場所では、自然と席を隣とする人がいつの間にか会話をはじめるような距離感の空間には、たしかに小さな連帯が生まれている。
「カフェだけど、カウンターで話せる場所」
それはもしかしたら、“おしゃれ”や“居心地の良さ”以上に、大切な価値かもしれない。
ルッキズムからの解放方法を考えてみると、メイク、整形しか方法はないのではないかというところに行きつき、うめつさんにも尋ねてみると、もう一つの方法は「マインドを変える事」でもあると言う。
実際にうめつさんも自らの見た目に悩み続けていた事もあり、引きこもりだった時期があったり、会社の面接というものがずっと嫌で仕方なかったと言う。整形手術も受けた事があるそう。
美の基準は時代によって変わる。
後天的に身につけた概念は、変えられる。
要は自己肯定ができる腑に落ちるポイントを自分で見出すしかないのである。
どんなあり方でもお互いに尊重し、認めて、話ができる、そんな雰囲気がそこにはあった。
どこにも居場所がなかった人の、「どこか」になれるように。
うめつさんが言っていた。「新しいものに敏感でありたい」と。
レトロは好き。でも、フェイクレトロではなく、本当に新しい価値観を提示する場所をつくりたかった。

「SOMEWHERE」が目指しているのは、“普通”や“常識”に馴染めなかった人たちが、自分のままでいられる居場所。
“変わってる”って言われたっていい。
“普通”を押し付けられて苦しかった過去があってもいい。
「どこにも居場所がなかった」と感じていた誰かの、
「ここかもしれない」と希望を抱ける場所になれたら。
そんな静かな灯りが、三軒茶屋の片隅で今日もゆれている。
銭湯の内装にインスピレーションを受けた当カフェは、入口に全てのセクシャリティを受け入れることを示した小さな暖簾を設置しています。自分以外のセクシャリティや性自認の方が、この世界にはいることを改めて認識しご入店頂けると幸いです。
監修: Lyset Jensen